杉の木の枝打ち
田舎の家には杉ノ木が10本くらい植っています。太いもので一抱えくらい半くらい。傾斜地なので、下枝を打たないと湿気が溜ってしまう感じがして、梅雨前に剪定をしておきたいと思っていました。専門家に頼むと、大体5000円/本くらいの値段でやってくれるそうです。結構良い料金です。お金も勿体ないので、自分でやってみることにしました。
テレビなどで見る枝打ち風景では、以下のような手順でやっています。
- 移動式の足場を作って乗り、木に回したロープで体を固定する。
- 手が届く範囲の下の枝から切り落とす。
- 足場を上にずらして、上に上がる。
私はクライマーなので、登山道具を使って作業を行いました。こんな感じの手順です。
- ロープを使い確保する。(登山者ですので、墜落に備えてロープで確保したい)
- アブミを使った人工登攀で上がる。枝を切らずにとにかくどんどん登る。(12〜15mくらい)。途中ランニングビレーも3つくらい取った。
- 上に支点を設置して、懸垂下降をしながら、上の枝から切って行く。
- 降りながらランニングを回収し、最後に地上に降りてからロープを抜く。
- 最上部の支点を回収する。
用意した道具と手順の詳細
今回は一人だったので、単独登攀システムを用いることとした。そこで用意した道具は、50mロープ、シュリンゲ、カラビナ、ハーネスといった普通の装備の他に、ソロエイドを使った。支点は枝を利用することも考えられますが、全てシュリンゲを木にグルっとまわして作りました。
人工登攀の支点も同様に作るのですが、通常のシュリンゲよりもデイジーチェーンのほうが使い勝手が数段良いので是非用意すべきです。理由は、木は上に行くほど細くなって行くので、長さ調節ができないとグルっと回したときに余りが出て、アブミの位置が下がってしまいます。デイジーであれば通す穴を変えることによって太さに合わせることができるので、カラビナの位置が下ることがないのです。シュリンゲでやるなら、長さの調節のできるシートベントで結束して使うのが良いと思います。
- 下端を固定して、ロープをソロエイドに通し、途中ランニングを取りながら、デイジー+アブミで登って行く。
- 遠くから見てどの枝まで切るかの見当を付けておき、その少し上まで登る。このシステムでは最高15m程度まで登れる(後述)ので充分でしょう。
- アブミを掛けたデイジーから自己確保を取り、シュリンゲをグルっと回して通し、懸垂支点を設置する。
- ロープを解いて懸垂下降の準備をする。まず、懸垂支点シュリンゲの木に巻いてある部分にカラビナ通してロープ(1)の一端をつなぎ、ロープを抜いた後に引けば支点が取れるようにセットする。このロープを降ろして地面に届くようにする。残りのロープ(2)(3)を懸垂支点に通して地面にぶら下げて地面に付ける。このため、ロープ全長の1/3までの長さしか下降できないことになる。50mロープで最高16mの高さまでが可能になる。
- ロープ(2)(3)のダブルで懸垂下降しながら途中で停止して、ノコギリで枝を切って行く。仮固定は好きな方法で良いが、私は足に巻きつける方式でやった。枝が出る度に止まるので、簡単なやり方が良いです。
- 地面まで降りたら、ロープ(2)を引いて懸垂支点から抜き、最後に懸垂支点の巻いてある部分に通したカラビナにつながるロープ(1)を引いて、懸垂支点のシュリンゲを回収する。
普通に確保訓練で行うレベルのことがこなせれば、手順を無理なく実行できると思います。注意点としては(あたり前のことですが)、
- 自分がぶら下がっている懸垂ロープ(2)(3)に傷を付けない。(ノコギリやナタを振うので注意)
- 懸垂支点回収のロープ(1)を掴まない。(テンションが掛かっているから抜けないとは思いますが)
- 切れて落ちる枝が下のロープに引っかかったりしないよう、コントロールする。結構太い(腕くらいの)枝を切ることになるので、ひきずり落とされる危険性がある。
実施した結果
慣れないので、2本切るのに5時間くらい掛かりました。用事があって午後1時から始めたので、予定していた本数をクリアできませんでした。日当から考えると、一日10本くらいは切れないとならないでしょうね。これは無理としても、2本目は要領も分ってスピードアップできたので、慣れれば、これだけ面倒くさいことをしても2時間/本くらいではできると思います。
しかしながら、一番困るのは、打った枝の始末です。実際に切ってみると、下から眺めていたよりも枝は太く、かなりの量になります。1本目は一箇所に運んで積んでいましたが、高くまで積み上がってしまい、途中から近場に積み上げるとにしました。枯れて軽く小さくなったら運ぶ積りです。自分でやってみると、林業従事者が、間伐や枝打ちした木を谷に投げ込んでしまうのも無理はないように思います。面倒だし、量が多いから。でも、沢登りしていて、杉や檜の材が谷を埋めているとがっかりするんですよねぇ。